朝井まかて『眩』 [書評]
朝井まかての『眩』を読みました。わたしにしては珍しくミステリーでも剣戟小説でもないのですが、読んでみました。ただ、葛飾北斎の娘、お栄(葛飾応為)を主人公にした物語です。北斎のことを描いたドラマなどで、お栄さんについては知っていましたが、お話を読むのは初めてでした。このお栄さん(葛飾応為)の作品、「吉原格子先図」、「夜桜美人図」や「三曲合奏図」をインターネットで調べると、大変すばらしいものであることが判ります。江戸のレンブラントと言われるのも頷けます。
お栄を描きながら、晩年の北斎のことも書いてあります。
あの富嶽三十六景が、北斎が70歳を過ぎて、かつ中気(今で言う、脳梗塞か?)にかかったあとに、その状態から復活して製作したものであったをしって驚きました。その北斎が、まだ作品が納得がいかないので、もう少し時間をくれと言う弟子に向かって
と啖呵を切るのですが、なるほどと納得してしまいますね。
また、物語最後で、お栄が、窮屈な暮らしをきらって、旅へ出るシーンで終わりますが、そこで
と言うセリフがいいですね。わたしのような高齢者を勇気付けでくれます。
お栄を描きながら、晩年の北斎のことも書いてあります。
あの富嶽三十六景が、北斎が70歳を過ぎて、かつ中気(今で言う、脳梗塞か?)にかかったあとに、その状態から復活して製作したものであったをしって驚きました。その北斎が、まだ作品が納得がいかないので、もう少し時間をくれと言う弟子に向かって
「いいか、俺たちゃ遊びじぇねぇんだそ。これが稼業だ。限りある時でいかに描くか、そのはらが括れねぇんなら素人に戻れ。その方がよっぽど気楽だ」
「だが、たとえ三流の玄人でも、一流の素人に勝る。なぜだかわかるか。こうして恥をしのぶからだ。己がまんぞくできねぇもんでも、歯ぁ喰いしばって世間の目に晒す。やっちまったもんをつべこべ悔いる暇があったら、次の仕事にとっとと懸かりやがれ」
と啖呵を切るのですが、なるほどと納得してしまいますね。
また、物語最後で、お栄が、窮屈な暮らしをきらって、旅へ出るシーンで終わりますが、そこで
「安穏の日々から出立するなら今しかない。もう、六十かもしれないが、先々のあたしから見たら、今日のあたしがいっち若いじゃないか」
と言うセリフがいいですね。わたしのような高齢者を勇気付けでくれます。
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