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トマス・ハリス『カリ・モーラ』 [書評]

トマス・ハリスの『カリ・モーラ』を読みました。あの『ハンニバル』で有名なトマス・ハリスが新たな猟奇殺人犯を創りだしたか思って読みましたが、違います。

たしかにおぞましいことを考える臓器密売人がでてくる。ただし、主人公は、幼い頃に、テロ組織に誘拐され、そこでいろいろな技を仕込まれたコロンビア人の女性、カリ・モーラ。当然ながら最後はの臓器密売人との対決となるのだが、意外にもあっさり片がついてしまう。

特に印象に残ったのは、カリ・モーラのトラウマにもなっている、敵の捕虜を拘束するため結束バンド。錆びつくこともなく、ジャングルに放置された人骨よりも、白く輝いて腐らない結束バンドである。
これが妙に真に迫っている点だ。また、最後のほうでは、カリがこの結束バンドの拘束から逃れるシーンまである。自分で試して見たいとは思わないけれど…。


カリ・モーラ (新潮文庫)

カリ・モーラ (新潮文庫)

  • 作者: トマス ハリス
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/07/26
  • メディア: 文庫



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知念実希人『魔弾の射手』 [書評]

知念実希人の『魔弾の射手』を読みました。『魔弾の射手』という題名に惹かれたからです。そもそもわたしがまだ中学生のころに父親の本棚に高木彬光の『魔弾の射手』というミステリーがあり、それを読んだことを思い出したからです。

本作は、犯人は、なんとなく、判るようにっています。殺害方法がメインの謎となっていますが、著者が医者らしく、聞き慣れない病名がでてきます。

本作のもう一つの持ち味は、天久鷹央、小鳥遊優(たかなしゆう)、鴻ノ池舞の三人の性格、それぞれの人間関係だが、面白いとは思うものの、いささか類型的に過ぎる気がしますね。


魔弾の射手 :天久鷹生の事件カルテ (新潮文庫nex)

魔弾の射手 :天久鷹生の事件カルテ (新潮文庫nex)

  • 作者: 知念 実希人
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/08/28
  • メディア: 文庫



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柚月 裕子『蟻の菜園』 [書評]

柚月 裕子の『蟻の菜園』を読みました。
いわゆる首都圏連続不審死事件(実際の裁判で、被告Kの死刑が確定している)をヒントにした小説だが、本作で描かれているのは、むしろ、最近いろいろな側面で話題となっている子どもへの虐待事件であり、不幸な生い立ちを持つ二人の姉妹の物語である。

いあゆる犯人探しのミステリではないので、その事件に至る背景を探るルポライターの物語です。
物語の途中から、二人称表現、「あなたは・・」という語りの部分が出てくるのだが、この語り手が誰なのかが、最大の謎と言っていい。また、本書のタイトル『蟻の菜園』も、どこからくるのか、謎だと思いながら読んでいたのですが、ともに最後に明かされます。

だた、妹のほうが、お金に困って、結局犯罪にはしるのだが、その原因がパチンコというのは、まあ、ギャンブル依存症と言ってしまえばそれまでだが、すこし安直にすぎるような気がしました。


蟻の菜園 ‐アントガーデン‐ (角川文庫)

蟻の菜園 ‐アントガーデン‐ (角川文庫)

  • 作者: 柚月裕子
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/06/14
  • メディア: 文庫



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畠山健二『本所おけら長屋(十三)』 [書評]

畠山健二の『本所おけら長屋(十三)』。とうとう十三巻まできました。相変わらずの泣き笑いの物語で、通勤電車のなかで読むのは危険です。

特に、四話目の「ゆうぐれ」がいい。「万松」コンビの片割れ、松吉の過去がわかるお話しになっている。
印旛で百姓をしていた、松吉の兄が死んで、松吉にあとを継ぐという話しが持ち上がるが、二人の姉とは折り合いが悪く、一方、兄嫁のお律は松吉の母親代わりとして優しく接してくれた思い出があり…。おけら長屋の面々の優しさが泣けてくる。

印象的なのは、万造の言う次ぎの言葉。
「血がつながってりゃ身寄りだってえなら、おれを刺した蚊だって身寄りじゃねえか、血がつながってたって、心がつながってなけりゃ、身寄りなんざ無用の長物でえ」



本所おけら長屋(十三) (PHP文芸文庫)

本所おけら長屋(十三) (PHP文芸文庫)

  • 作者: 畠山 健二
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2019/08/01
  • メディア: 文庫



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葉室麟『蛍草』 [書評]

葉室麟の『蛍草』を読みました。
NHKのBS時代劇で「螢草 菜々の剣」というドラマをやっていて、その原作が葉室麟さんだと知って手に取りました。

早くに両親を亡くし十六歳で女中奉公にでた菜々だったが、主人の風早市之進は藩政改革を目指していたが、無実の罪を着せられ、囚われの身となってしまった。驚くことに市之進を嵌めたのは、無念の死を遂げた菜々の父の仇敵、轟平九朗だった。風早家の幼き二人の子を守るため菜々は、轟平九朗との勝負にでる。
そして、市之進の妻、佐知が自分が亡くなった後の後添えには菜々を、と指名してくれるのだが。はたして、そのようにうまく話しが進むのか・・・。

また、市之進がてっきり殺されるのではと思っていたら、そこは予想が外れてしまいました。
最後の結末も、市之進と菜々が言葉を交わさずに、二人の子どもに語らせるのはうまいですね。

ただ、菜々への想いを寄せる従兄のの宗太郎が少し、かわいそうだという感想はありますね。

菜々に剣を教える、壇ノ浦五兵衛をだんご五兵衛と、そして質屋のお船をおほねなどと、言い間違えるシーンも面白みがあって、いい。こうした根底で流れる明るさは、葉室作品では『川明かり』以来で、好きな作品と言えるでしょう。



螢草 (双葉文庫)

螢草 (双葉文庫)

  • 作者: 葉室 麟
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2015/11/12
  • メディア: 文庫



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今村翔悟の『玉麒麟 ぼろ鳶組』 [書評]

今村翔悟の『玉麒麟 ぼろ鳶組』を読みました。

今回は、こともあろうに鳥越新之助が、豪商・橘屋一家惨殺及び火付けの下手人として手配されてしまう。腕に覚えのある新之助は、一家の娘を人質に逃走を続ける。一方、幕府の命で動きを封じられたぼろ鳶組頭取松永源吾を助けるため、本所の銕こと、長谷川平蔵が真相を求めて捜査に当たる・・・。

新之助の人柄を知る、江戸の火消したちは、新之助の無実を信じて助けてくれる。これに感激ですね。

ちなみに、玉麒麟とは、新之助の愛読書「水滸伝」に出てくる梁山泊の副将、盧俊義。その盧俊義の渾名が玉麒麟。ぼろ鳶組を束ねる松永源吾を支える頭取並、新之助を表している。

ただ今回も、盗賊たちが何を狙って、橘屋に押し込みを働いたのか、という点は結局謎のままです。



玉麒麟 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫)

玉麒麟 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫)

  • 作者: 今村翔吾
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2019/03/13
  • メディア: 文庫



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映画『アルキメデスの大戦』 [映画]

映画『アルキメデスの大戦』を見てきました。すでに夏休みになっていますが、お客さんは、わたしと同様にお年寄りが多かったですね。ヤマト効果でしょうか?
菅田将暉ははまり役でしたね。

ポイントは、最後の平山造船中将(田中泯)の言葉でしょうね。大和建造の本当の目的が明らかにされます。
ただ、昭和20年4月7日に大和が最期をむかえてからも、4ヶ月、結局原子爆弾を落とされるまで、終戦にできなかったのは、やはり負け方を知らない国民なのでしょうか。

https://archimedes-movie.jp/sp/index.html
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今村翔吾の『狐花火 羽州ぼろ鳶組』 [書評]

今村翔吾の『狐花火 羽州ぼろ鳶組』を読みました。いよいよ、ぼろ鳶組の話しも第7巻です。

明和の大火の下手人、秀助は、愛おしい娘を失ったことから、復讐のために江戸を焼いた。新庄藩火消頭松永源吾らの活躍にうよって捕えられ、火刑となったはずだ。ところが、その秀助の手口を真似たと思しき火付けが再び起きる! 秀助は生きているのか? その狙いは? 
そのころ、同時に、番付狩りと呼ばれる、江戸の火消し番付けの上位にいる者ばかりをねらった暴漢も表れていた。

いつもは、手柄争いもあり、いがみ合っている火消したちが、猛火に挑むために協力して立ち上がる。その姿に感動します。生きているかと思われた秀助だったが、その真相は・・・。
そして、本作では、火付けを裏で操り、反田沼意次を画策する一ツ橋がその姿を始めて表す。
ただ、物語としては、肝心の火付けとの対決は次回へ持ち越しか?
少し中途半端な終わり方ですね。


双風神 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫)

双風神 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫)

  • 作者: 今村翔吾
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2019/07/12
  • メディア: 文庫



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上田秀人の『舌戦 百万石の留守居役(十三)』 [書評]

上田秀人の『舌戦 百万石の留守居役(十三)』を読みました。

将軍綱吉の命により、江戸まで出向いた本多政長。ただ、綱吉との謁見の前に、評定所にて、江戸の加賀藩邸が無頼の徒に襲撃されたことを弁明しなければならなかった。相手は、本多の仇敵、老中大久保加賀守。如何にこの危難を乗り切るのか。そして綱吉の話は??

本作は、琴さんも佐奈さんもほとんど出てこない。数馬も活躍の場面は少ないので残念。むしろ本多政長が主人公といった趣である。次回作に向けて、政長の嫡男、政敏が登場してくる。前田家の家中に政長を邪魔に思う一派がいて、まだ部屋住みの政敏を担ごうとする動きが出る。ところがこの政敏、実は意外にもキレ者ではないかと思うのですが…


舌戦 百万石の留守居役(十三) (講談社文庫)

舌戦 百万石の留守居役(十三) (講談社文庫)

  • 作者: 上田 秀人
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/06/13
  • メディア: 文庫



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上田秀人『竜は動かず』 [書評]

上田秀人竜は動かず』を読みました。上田氏の作品にしては、凡庸です。あまり顧みられることがない奥羽越列藩同盟に光を当てたのは評価できるが、いかんせん、地味で、物語もはらはらドキドキする展開ではない。

仙台藩下級藩士の婿養子だった玉虫左太夫は妻との死別を機に、学問を究めるため江戸へ出奔した。そうして掴んだのが、外国奉行・新見豊前守の従者の任だった。新見はこれから正使として、日米修好通商条約の批准にアメリカに行くことになる。咸臨丸の勝海舟を追いかけるように、左太夫の乗った船は品川沖を出港した。それは日本人で初めての、世界一周の旅の始まりでもあった……。

この、玉虫左太夫は、戊辰戦争のおり、東北諸藩を回り、奥羽越列藩同盟同盟を成立させた立役者の一人として知られているそうだが、わたしにとっては、初めて知った人物です。

実際にアメリカを自分の目でみてきた玉虫。彼にとって、身分で他人を区別しないアメリカは魅力に溢れていた。ただ、結局、カレも伊達藩の旧態依然とした体制のなかで、結局切腹するはめに陥る。おそらく随分と無念であったろうと思う。この時代には、こうした無念の人が多くいたのだろうと思う。


竜は動かず 奥羽越列藩同盟顛末 上 万里波濤編 (講談社文庫)

竜は動かず 奥羽越列藩同盟顛末 上 万里波濤編 (講談社文庫)

  • 作者: 上田 秀人
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/05/15
  • メディア: 文庫



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